どうして、『好きになっちゃいけない』って思う相手ほど好きになるの?

掟を破ってまで愛したいとおもうのはなぜ?

禁忌を犯してまで一緒にいたいと思うのはなぜ?

すべては、彼がすきだから・・・・・・?










悪魔は天使にをする

 








「クリーク!クリーク、どこにいるの? 」

お姉ちゃんが、よんでる。

黒く厚い雲が、空を覆っている。

ここは、テール・タウン。悪魔の住む町。

あたしたち、魔王様の子。つまり、悪魔たちが放つオーラで太陽が顔をだすことはない。
あたしたちは、闇に生きる者。

「はーい!ここに、いるよ」

あたしは、小さな建物のなかで返事をした。

ここは、あたしが毎日来ているところ。

人間たちでいったら、教会みたいなところ。

魔王様が、ねむっていらっしゃるところ。魔王様は、あたしの大おじい様のこと。
あたしの一族は、悪魔界でも強力な力をもつとされている。らしい・・・。

実際のところ、あたしはそんなものどうでもいい。

人間界にいって、人間の心をこちら側にひきこもうをしても、最近の人間は神も悪魔も信じていないから、いくら強力な力をもって人間を誘惑したところでなんにもならないしね。あ〜あ、つまんない。

「クリーク。ちょっと、薬草を取ってきてくれない? 」

「薬草?なにに、つかうの? 」

「ちょっとね・・・・」

そういって、お姉ちゃんは不気味に笑った。

「・・・・その薬草、どこにあるの? 」

あんな風にお姉ちゃんが笑うということは、またろくでもない大昔の魔術でもしようとしているのに違いなかった。

あたしは、なかばあきれ気味に言った。

「川の近くに、薬草ばかり生えてるところあるでしょ?こそに、黄色い花と赤い実をつけた草があるの。それを、とって来てほしいの」

「分かった。いってくるね。どのくらいとってこればいい?」

「そーねぇ。あ、このかごに入るだけ入れてきて」

そう言って渡されたのは、薬草を入れるには小さすぎるような感じがするほど、小さいものだった。

「じゃあ。いって来ます」

そういって、あたしは薬草が生えている川岸へと向かった。

 

裏庭のほうから、川岸へ向かった。

小さな橋を2つ渡ると、すぐそこに川岸はある。

「あ。あった。これかぁ・・・・」

あたしは、適当に生えている薬草をとって帰ろうとした。

そのとき。

「うわぁ! 」

転んでしまった。

「痛〜。あぁ〜お姉ちゃんに薬もらってこればよかったよ」

知っての通り、あたしたち悪魔には魔力がある。(天使にもあるけど)

それは、人を傷つけることも、癒すことも出来る。もちろん、自分自身を癒すことも可能だ。

だけど、あたしたち一族は、その「癒し」の魔力が極端に低い。

なぜなら、あたしたちは悪魔界でも上のランクのものしかできない「未来をみる」という力をもっているからだ。自分自身の未来はみてはいけないというのが、この力の特徴だ。

その力があるから、人を傷つける力はあっても「癒す」力は無いに等しい。

あたしは、まだ魔力が未熟だから、「癒し」の力なんて使えなかった。

「どうしよぉ・・・・」

足をくじいてしまったらしい。

言っておくが、悪魔や天使に羽があるという考えは人間しかもっていない。

それは、人間が神も魔王も天上に存在するものだと考えているからだ。

人間界に行く時は、時空の歪みを利用するだけなんだから。

「これじゃ、あるけないよぉ」

すると、むこうから誰かがやってきた。

「だっ誰!? 」

あたしは、声をあげた。

やってきたのは、1人の少年。

その少年は、綺麗な水色の瞳に、金色の髪をもっていた。

それは、天使の特徴。

少年は「大丈夫? 」といって、近づいてきた。

「くるなぁ!あたしに、近寄るなぁ!! 」

あたしは、声を荒げた。

天使は嫌いだ。

小さいころに、お姉ちゃんや、大おじい様から大昔に、天使が酷いことを悪魔にしたという話を聞いてからは、天使が大嫌いだった。なにが、天の使いだ。

それでも、少年は近づいてきた。

「足、くじいてる・・・・? 」

「寄るな!それ以上近づいたら、おまえの腕を吹っ飛ばす」

あたしは、声を低くし吐いた。

「怖がらないで。大丈夫だから。足を治してあげる」

「怖がってなんか・・・・っ・・・・」

怖がってなんかいないと言おうとしたら、足に激痛が走った。

あたしが足を見ようとしたとき、足に暖かいものがふれた。

「これで、大丈夫」

いつの間にか少年は、あたしの足の傷を治していた。

さっきの暖かいものというのは、少年の手だった。

その暖かさは、とても優しかった。

「じゃあ、僕はこれで」

そういって、少年は川の向こう岸にいってしまった。

あたしは、ただ呆然と治った足と、少年の後ろ姿を眺めているだけだった。

 

「ただいまぁ〜」

「あ、お帰り。薬草あった? 」

「うん。はい。これでよかったよね?」

あたしは、持っていたかごをお姉ちゃんに渡した。

「えぇ。ありがとう。晩御飯まで、もう少し時間があるから休んでなさい。

 疲れたでしょ? 」

「うん。そうする。晩御飯になったら呼んで」

「分かったわ」

そういってあたしは、自分の部屋に入ってベッドに入った。

あたしは、考えていた。あの、少年のことを。

あの天使はなんでこちら側に来ていたのだろう。

名前はなんていうのかな?

なんであたしを、助けてくれたの?

    ・・・・・また、会えるかな・・・・・・?

そう思ったとたん、あたしは今の考えを振り払った。

なに言ってるのよ。あたし・・・・!!

天使なんかに会いたいなんて。

ありえない。

でも、なに?この、ドキドキする感じ。

もう!なに?

そう!きっと疲れてるのよ!一眠りしたら、落ち着くわ。

そう自分に言い聞かせ、眠ることにした。

 

あたしは、立っていた。

あの、少年にあった場所に。

すると、向こうから少年がやってきた。

ただ、黙って微笑んで、あたしの前に立っている。

あたしも、なにも話さなかった。

すると、彼はあたしに花束をくれた。とても、綺麗な花束を・・・・・・。

 

目が覚めた。たしは、自分の部屋にいる。

さっきのは、夢。

あんなこと、絶対にない。

でも、このドキドキする気持ちはなに?

あの天使のことを考えるだけで、ドキドキが止まらなくなる。

これは、なに・・・・?

「クリーク?ご飯できたわよぉ」

下で、お姉ちゃんがあたしを呼んでいる。

「はーい。今、いくよ」

そういってあたしは、下へおりた。

テーブルの上には、料理がならんでいた。いつもと、かわらない晩御飯。

「父さんと母さんは? 」

「今日も、帰ってこられないって。さっき連絡があったの」

「ふーん」

父さんと母さんは、人間界への時空の歪みを管理している。

管理という言葉が適切かどうかはわからないが。

魔力をかけて、人間がこちら側へくるのを防いでいる。

最近、かけた魔力が弱くなってきているので新しく、魔力をかけに行っている。それは、必要以上に体力を使うらしく、帰ってきたら2人とも3日間は眠り続ける。それだけ、大変だけど重要なことなんだろうと、あたしは思う。

まだまだ、知らない事が多すぎるあたしには、難しすぎる話だった。

ご飯をたべているとき、ふとお姉ちゃんにたずねた。

「ねぇ、お姉ちゃん・・・・・・」

「ん?なに? 」

「あのさ、さっきの薬草、何に使うの? 」

「あぁ、あれ? あれは、恋の魔法よ」

「コイの、魔法・・・」

「そう。あれを、好きな相手に飲ませるの。そして、飲ませた後一番にその人に会うの。そうすると、その人は魔法をかけた人を、愛してくれるの」

あたしは、それを聞いてドキンと胸が鳴った。

「好きな相手」「恋の魔法」

「で、でもそれは、魔法でしょ?本当のその人の気持ちじゃないでしょ?

 魔法がとけたとき、どうするの・・・・・・? 」

「どうもしないわ。また、薬草を飲ませればいいことなんだから」

「そ、それは違うと思うよ」

「いいのよ。それが偽りでもその相手は私のことを愛してくれるんだから」

あたしは、そのまま黙った。

 

朝になった。

といっても、空はあいかわらず黒く暑い雲に覆われている。

夜は、本当に「静寂と漆黒」だけだ。

朝や昼間は、一応回りが見渡せるくらいに、あかるくなる。

あたしは、なんとなくあの川岸へ向かった。

あの、天使にあえると思ったから・・・・?

違うと、言い聞かせながらも、なぜか足が速くなる。

また、あの天使に会えると、心の隅でおもっていたからかもしれない。

草をかき分けて、進んでいった。

川岸についた。

あたしは、けがをしたところで、座った。

すると、向こうから草を踏むカサカサという、音が聞こえた。

ハッと顔をあげた。そこには、あの天使が立っていた。

「やぁ。あれから、足は大丈夫?」

「う、うん。昨日は、ありがとうね。あと、ごめんなさい・・・。足、治してくれたのに、あんなこと言ってしまって・・・・」

「いいよ。僕には、治癒の力しかないから」

「あなた、名前は?あたしは、クリーク。ヴァンイ・クリーク」

「僕は、アダイム。クリナール・アダイム。みんなからは『アダ』って呼ばれてる」

「アダイム・・・・。素敵な名前ね」

「そんなことないさ。ところで、クリーク。君は、天使じゃないね」

「そうよ。あたしは、悪魔よ。だから、今こうしている所を誰かに見られてしまったら、あたしはテール・タウンを追放されてしまう」

「僕もそうさ。君といる所を誰かに見られでもしたら、大変なことになる。でも、昨日クリークの足を治したときから、君のことがずっと気になってて、今日も、また会えるかもって思ってきたんだ」

「そうだったの?!実は、あたしもようなの」

その後、2人はいろんなことを話した。

「あ、もう帰らなきゃ。じゃあね。また、会える?」

「あぁ。きっと」

そう言って、2人はおたがいの家に帰っていった。

あたしのあしどりは、軽かった。

なせか、スキップをしたくなった。

こんな気分は、初めてだ。アダのことを考えるだけで、飛んでいるような気分な気分になった。

 

「ただいまぁ〜」

「どこいってたのよ!いなくて、心配したのよ!!」

そう言ったのは、お姉ちゃんだった。

「川岸に行ってたの。なんとなく、いきたい気分になって」

「そうだったの。でも、よかったわ。なんにもなくて。今度からは、出て行くとき、一言いってからにしてよね」

「ごめんなさい」

「まぁ。いいわ。・・・・・あら?これ、なに?」

そういって、お姉ちゃんは、あたしの肩についていた、糸のようなものをとった。
それは、金色をしていた。あたしは、すぐにわかった。

(アダの髪の毛だっ!)

「金色の糸?髪の毛みたいね。それも、天使の」

川岸にいたときに、あたしの服にアダの髪が引っかかったとき、ついたのだと思う。ど、どうしよう・・・・。

「まさか、あんた。天使と一緒にいたんじゃないでしょうね?」

「な、なわけないでしょう? なに、言ってるのよ!冗談よしてよ」

「でも、こんな髪の色、悪魔界にはいないわ。みんな、黒髪か、こげ茶よ」

「そ、そうだけど・・・・」

なんて、言い訳しよう。このことで、頭はいっぱいだった

「ち、違うよ。そ、それはきっと、部屋にあるぬいぐるみの、毛よ」

「ぬいぐるみが、こんな長い毛つけてるわけないでしょ?」

あぁ、墓穴ほってしまったよぉぉぉ。

「いいわ。こんなんじゃ、分からないわ。こっちへきなさい」

そういって、お姉ちゃんは、あたしを地下室にある鏡の前にすわらせた。

この、鏡は前に座ったものの、未来や過去を映し出す鏡だった。

「お姉ちゃん。嫌だ!!放してよ!!」

あたしは、お姉ちゃんの力によって、動けなくなっていた。

「なんにもないなら、ちゃんとここに座っていられるはずよ?」

そういったお姉ちゃんの顔はすごい、怖かった。

すると、お姉ちゃんが呪文を唱え始めた。

「・・・・・闇の魔王の名のもとに集いし49の悪魔。ここに我が力でヴァイン・クリークの過去を映さん・・・・・・」

すると、目の前の鏡に今朝の様子が映った。

アダとあたしが、一緒に話をしている。

「やっぱりね。しかも、これクリナール家の天使じゃない」

「アダが、どうしたの?」

「クリナールっていうのは、天使界で最も力のある一族よ。天使の最大の力は『癒し』。その力が、最も強い一族よ」

アダがそんな一族の一人だなんて知らなかった。

「でも、なんでこんなところに来てたのかしら・・・・?まぁ、なんでもいいわ。あなたは掟を破った。それ相応の罰をあたえます。明日、総会を開くわ。そのときに、判断をくだします」

そう言って、お姉ちゃんは戻っていった。あたしは、明日1番きつい判断くだ

される。それは、『人間界に行き、人間として生きること』。それは、魔力も、

全てを捨て、人間として最低限の知識と言葉をもらって。それは、あまりにも、

つらいことだった。

あたしは、そのまま大急ぎで川岸へ向かった。

そしてそこで、祈った。

(アダっ!来て!!どうしても話したい事があるの。どうか、来て)

そう祈っていると、カサカサっと草が揺れる音がしてあたしは、顔をあげた。

そこには、アダがたっていた。

「アダっ!!」

あたしは、泣きながらアダに飛びついた。

「あたしね、アダと一緒にいたことバレちゃった。たぶん、明日人間界におくられる。そしたら、アダにもうあえなくなっちゃう。ごめんなさい。きっとアダにもなにか、悪い事が起こるわ。ごめんなさい。ごめんなさいっ」

すろと、アダはゆっくりとあたしの背中をさすってくれた。暖かい手で。

「クリーク落ち着いて。実は、僕もなんだ。君と居るところを誰かにみられていた。僕は、みんなに内緒でここに来ていた。最初は、誰かが助けを求めている気配を感じたから」

「それって・・・・・ケガをしたあたし?」

「そうだよ。その次は、会いたくてここにきた」

「あたしも。でも、あなたに会った夜。あなたに会いたいって思う気持ちを消せなかった。本当は、消さなくちゃいけなかったのよ!なのに、また会いたいなんて思ったから、こんなことになったんだ」

「それは、違う。僕も同じだけど、そんな気持ちを消せるわけがない」

沈黙。

その、沈黙を破ったのは、彼の一言。

「好きだ。クリーク」

その言葉を聞いてあたしは、びっくりした。

「え?今、『好き』って・・・・」

「言ったよ。クリーク。好きだよ。」

あたしは、なぜかなみだがでてきた。

「こんな時に、告白なんかしないでよっ・・・」

「で、君の答えは?」

そんなの、決まってる。

「大好きっ!!」

その夜、あたしたちは禁忌を犯した。

もう、人間界へいっても寂しくなんかない。

心はずっと、アダと一緒だから・・・・・・。

 

次の日。

総会が開かれた。大きな、台が用意してある。

あたしは、そこに後ろで両手を縛られた状態で、登った。

まっすぐ、前をみて。

「ヴァイン・クリーク。君は悪魔界の掟を破り、二度も天使と交流した。その罪は、重い。よって、ヴァイン・クリークを人間界へ送る」

あたしは、その判断をなげかとても静かな心で聞いていた。

「クリーク、最後に言いたいことは?」

あたしは、そう聞かれて父さんたちのいるところに向かっていった。

「父さん。母さん。お姉ちゃん。ごめんなさい。今まで、ありがとう」

あたしは、そのまま振り返らず扉に向かって歩き出した。

「もう、何も怖くない。心はアダとずっと一緒だから・・・・」

あたしの身体は闇に包まれた。

 

 

 

 

 

「今日から、1人暮らしか・・・・」

1人の、女性がダンボール箱にかこまれて呟いた。

彼女の名は、坂下 紅利(さかした くり)。友達からは「クリー」と呼ばれていた。

「とりあえず、さっと片付けてお隣にあいさつ行かないと」

彼女は、手際よくかたづけていった。

「ふぅ〜やっと終った。まだ、大丈夫ね。お隣にあいさつに行ってこよう」

そういって、隣の家に行った。

インターフォンをならして、「すみませーん」と声をかけた。

出てきたのは、水色の瞳に金色の髪の男性だった。

彼女は、つい言ってしまった。

「・・・・アダ・・・・・」

「会いたかった。クリーク」

2人の思いは 時空を越えて 再び巡りあう


        〜END〜


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【FINE DAY〜同じ空の下〜】の海樹希さんからキリ番100を踏んだキリプレでいただきました。

天使と悪魔。いいですね〜vv設定素敵ですー!!

アダとクリーク会えて良かったねっ。これこそ愛ですよ、愛。笑


ありがとうございました!